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沢登りを楽しもう

日本は沢登りの宝庫

沢の流れに沿って渓谷をさかのぼりながら、滝から流れ落ちる天然のシャワーを浴び、時には崖を 登り、時には小滝の滝壺に飛び込む。ゴルジュを越え、浅瀬を渡り歩いたかと思えば、ある時は澄み きった川淵を泳いで谷から谷へと移動する。このたくさんの冒険的要素こそが「沢登り」の魅力であ り醍醐味である。トレッキングや山登りでは味わえないワクワク感がいっぱい詰まっているのだ。経 験者と一緒に行えば、年齢性別問わず初心者でも愉しめる。日本に暮らしながら、沢登りの愉しみ を享受しないのはあまりにももったいない。日本ほど沢登りに適した環境はないからだ。スケールが ちょうどいい急峻な山々がいくつもあり、その谷間を流れる水量が一定であることが理由のひとつに 挙げられる。地球的視点から見ても、日本よりも以北の国々は雪と氷の世界ゆえに沢登りはとうてい 不可能であるし、日本とほぼ同じ緯度のヒマラヤやヨーロッパ周辺では山の標高が高すぎて下流は ほとんど氷河になっている。つまり日本ほど安全かつ快適に沢登りができる国は他にないのだ。沢登 りに向いた場所はどこにあるかって? 日本であれば、山あるところに沢はある。日本は沢登りをす るロケーションの宝庫なのだ。思い立ったら、すぐにでも始められる。


新潟県に位置する魚野革水系の米子沢はスケールの大きな明るく美しい沢。東京近郊にはない雄大な景観と大ナメは迫力満点

利根川水系の湯檜曽川は、沢登りの人気スポットで、あらゆる醍醐味が体験できる。年によっては遅くまで残雪があり難易度も変わる

安全を確認して、高さがあまりない滝壺ならば思い切ってダイブ!  ワクワク、ドキドキの瞬間。思わず歓声が上がる。沢登りだからこそできる体験だ



上)向う岸にどう渡るか? 流れの激しくない浅瀬なら、そのまま泳いでしまえばいい。
下)チロリアンブリッジのロープワークを駆使して谷から谷へと移動。チームワークがものをいう

沢登りは複合的な愉しさにあふれている

「沢登りの愉しみとは、清澄な水とたわむれながら、クライミ ングやスイミングといったアクティビティを複合的に体験でき るところ」。日本の沢登りの第一人者的存在、敷島悦朗氏は そう解説する。「岩登りは記録達成の目的が強くてストイック すぎますが、沢登りは童心に帰った気持ちで純粋に遊べる。 いってみれば大人が愉しめる小さな探検ごっこなんです」。チ ロリアンブリッジの技術で谷を渡るもよし、浅瀬をそのまま泳 ぎ渡ってもよし、小さな滝壺があれば思い切ってダイブなど、 汲めども尽きない喜びに満ちあふれているのだ。安全面を考 慮した上でも、探検隊よろしく仲間と共にのぞむのが正しい。 仲間がいるからこその愉しさもある。「ゴルジュや滝に出く わしたら、そこをどう攻略するかみんなで考えるのが面白い。 チームワークで自然の中を突破し、喜びを分かち合う。ロープ で確保しあって崖を登ることもあれば、肩車をしあう場面もあ る。身体だけでなく頭も使う。だから飽きることがない」。

敷島悦朗/1951年、熊本県出身。 国内では谷川、北岳、穂高、南・中 央アルプスの岩や沢を登り、海外で はネパールヒマラヤ、ダウラギリ5 峰、南米ペルー、アマゾン、アフリ カなど数えきれない高峰を制覇。 日本の沢登りにおいては草分け的 存在であり、現在は「オリゾンテ登 山学校」を主宰し、そこで沢登りの 講習を行っている。著書は『決定版 関東周辺沢登りベスト50コース』 『沢登りのススメ』など多数にのぼ る。近著に『日本百富士ふるさと 100名山』がある


沢登りは単独でも行うことができるが、技術を共有できる仲間と共にチームワークを駆使して 自然を突破する方が安全であり楽しくもある。みんなで知恵を出し合って最適な遡行ルートを 見出し、力を合わせて岩場や滝を登る。仲間がいれば山中泊も可能だ。テントやタープを張る 人、焚き木を集める人、川魚を釣る人、食糧を調理する人など役割分担できるからだ。沢登り のシーズンは4月から10月。中でも6、7、8月は滝のシャワーを浴びたり、水の中を泳げるベス トシーズンだ